駅前の景色を取り戻す再生の物語はここから

　山梨県北杜市清里。かつては「高原の原宿」として賑わいを見せた街は、 40年たった現在、駅前の店舗のほとんどは撤退し、閑散としている。清里駅の目の前の立地で、土産店として繁盛していたこの場所も、長らくがらんどうになっていた。そんな様子を見かねたオーナーが物件を買い取ったことをきっかけに、『K’s CAFÉ』として再開したのが去年の12月のこと。店長を任された矢野嘉彦さんは、オーナーと旧知の仲であり、10年ほど前まで、近くで洋食店を営んでいた。その腕を見込まれて、駅前の景色を取り戻す役目を任されたのだった。

　長い年月を感じる2階建ての建物、扉の先には薪ストーブが主役の開放的な空間が広がる。木をふんだんに使ったロッジ風の店内に、アンティーク調の家具が心地良く馴染む。メニューはスパゲティと日替わりケーキなどのほか、モーニングもある。スパゲティは、ナポリタンを定番に、季節に合わせて5〜6種類のラインナップを用意している。

　矢野さんが手掛ける太麺のスパゲティは、全て手打ちによるもの。1日に20人前の量を約2時間かけて仕込む。製麺機にも通らない硬さのため、うどんのように力いっぱい伸ばして切っていく。手間暇かけた手打ち麺は、一般的な乾麺と違い、強い弾力があり、本場のパスタにも近い、歯応えのある食感を楽しめる。

　「昔のように〝観光地だから〞〝新しいから〞という理由だけでは、お客さんは来てくれません。都会の店舗で出しても通用するようなクオリティーで、旅のついでではなく、目的になるような場所を目指しています」。おいしさと真摯に向き合う。もう一度、街に心地良い風が吹くことを信じて。

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DATA

• K’s CAFÉ
• 【エリア】山梨・北杜市
• 【電話】0551・45・8989
• 【住所】山梨県北杜市高根町清里3545
• 【営業時間】 8:00~17:00
• 【定休日】水、木

この記事を取材した人

ライター 北村有沙
石川県生まれ。ライフスタイル誌の編集者を経て、長野県上田市の本屋バリューブックスで働く。


カメラマン 篠原幸宏
1983年生まれ。20代後半の旅をきっかけに写真を始める。現在、長野県を拠点に活動中。