自然の中で生き抜くサバイバル技術から発展した野遊びの技術「ブッシュクラフト」。発祥は北欧といわれ、ヨーロッパやアメリカの開拓団は日々の生活技術として使っていたという。
森で遊びながら、暮らすために必要な材料を調達し、自分で作る。自然から享受する力が、人生をさらに豊かにしてくれる。そんな野遊び術「ブッシュクラフト」を学べるのが『八ヶ岳ブッシュクラフトスクール』だ。
何かを頼るのではなく
自分で生み出す力をつける
『八ヶ岳ブッシュクラフトスクール』を運営する小池耕太郎さんは、幼い頃からキャンプを楽しんでいたが、一旦都会へと旅立ち、20歳を過ぎて再び地元へ戻り林業と出合ったという。「都会から戻り自信を失っていた自分が、自然の中でサバイブをしながら働くようになって、心も体もよみがえったように感じました。何かに頼って生きるのではなく、自分で生み出していくことが楽しい。森が教えてくれる“生きる力”は、今の世の中で起こっている社会問題の解決の糸口にもつながると思います。ブッシュクラフトはこうした生きる力、すなわち自分の頭で考え、サバイバルをしながら暮らしを営む力を養います」。
シェルター作りも火起こしも
森にある自然を最大限利用する
スクールでは災害時にも役立つ野営技術も指導する。まず座学でブッシュクラフトの基礎理論を理解してから実践に入る。フィールドワークの種類は多種多様。ブルーシートでシェルターを作るのもそのひとつだ。まずは広く森を見渡し、安全性や風向きを考えて場所を決めるところから始まる。夏なら風通しをよくするなど、快適に過ごす工夫を考えながら、居心地のいいシェルターづくりをするのはまるで秘密基地を作るようでワクワクする。
「物を掛けたいのならば先がY型になったもの、ペグを作るためならまっすぐのものなど、素材となる木を選ぶ際にも工夫ができる。いろいろと試しながら発見していく楽しさもあります」と小池さん。
野営で肝心のファイヤーメイキングは、焚き火台を使わずに、地面に穴を掘って火床を作るところからスタート。「後で火床を埋めてもとに戻すために、掘り起こした表土はできるだけそのままの形で残しておくことが大切です。森を痛めたり、山火事を起こしたりしないために、木の根のない場所を選び、もとの状態をできるだけこわさないようにすることを心がけています」。
他にも、薪は細いものを数種類用意しておく、湿った地面では火がつきにくいので乾いた木でベッドを作るなど、初心者ならずとも知っておきたい知恵を伝授。自分で火がつけられた時の喜びは何物にも代え難いものだ。
先人がもたらした知恵を学び、森と人がもっと近づく技
「ブッシュクラフトを通して森と人がもっと近づき、相互理解が深まって森や自然を大切にしてくれる人が増えたら嬉しいです」と小池さん。先人たちの知恵を学びながら、いざという時に役立ち、自然への畏敬の念にもつながるブッシュクラフト。便利な暮らしに慣れた今だからこそ、学びたいアウトドア技術だ。
教えてくれた人 株式会社木葉社 代表 小池耕太郎さん 長野県林業士、防災士、JBS認定インストラクター、危機管理リーダー教育協会(CMLE)認定アドバイザー、72時間サバイバル教育協会コーチ。Uターン後、林業に従事。2013年に独立以来、人と樹木をつなぐ活動を多岐にわたり展開している。
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DATA
- 八ヶ岳ブッシュクラフトスクール/木葉社
- 【エリア】長野・茅野市
- 【電話】0266・78・6931
- 【住所】長野県茅野市ちの236-7
- 【他】www.mokuyousha.com、mokuyousha@gmail.com
この記事を取材した人 ライター 小山芳恵 ライター生活四半世紀。八ヶ岳に出合ってその魅力にはまり、ライフワークの一環として八ヶ岳デイズに携わる。 カメラマン 荻野哲生 1986年生まれ。旅する写真家。「写真からストーリーが伝わるように心がけています」。