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生きる、暮らす、働くがつながる豊かな自然の中で紡ぐ、3人の暮らし

2024.1.12

植物観察家と焼き菓子職人。 どこでも仕事ができるスキルを身に付け、憧れの移住を実現。 まな娘との時間を何よりも大切にする家族の日々。

どこにいても仕事ができる植物観察家を選択して移住

 「ここには山があって川があって、生きていくために必要なものは全部自然がくれます」。そう話し、微笑む鈴木純さん、千尋さん夫妻。鈴木さん一家が東京から北杜市へ移住したのは2021年のこと。純さんの父親が武川町で果樹園を借りたことがきっかけだ。「いずれは田舎暮らしをしたいと2人で話していました。どこでも良かったのですが、どこも決定打がなかった。父親が北杜市で果樹栽培をやるようになり、何度も遊びに訪れるうちに北杜市に住むイメージが湧いてきたのです」。一人娘の詩ちゃんをぜひ豊かな自然の中で育てたい。その気持ちも北杜市移住に拍車をかけた。

 純さんの仕事は植物観察家だ。この仕事を選んだこともまた、移住したい気持ちにつながっていたという。「大学を出て旅行関係の仕事に就いていましたが、会社勤務では移住ができない。個人事業主としてどうやったら稼ぐことができるか、真剣に考えました」と純さん。自ら企画し、開催した植物観察会が反響を呼んだことに自信を持ち、また植物観察家として2年を過ぎたころから仕事として成り立つようになり、独立したという。「この仕事ならどこにいてもできると確信したので、移住を決意しました」。

 植物観察家の仕事とは? と尋ねると「ガイドしながら、どのように植物を見たら楽しいか、どういう生き方をしているかという視点から植物を観察する方法を紹介しています」とのこと。「身近に自然があって、さまざまな植物に出合うことができるこの環境はとても気に入っています」。

働くためではなく暮らしを中心にした生き方

 純さん同様、千尋さんも移住の夢をかなえるために仕事を選択。食に関する仕事で手に職をつけるため、東京ではカフェのキッチンスタッフとして働いていたそう。「食の仕事なら、その土地の農家や、地域に暮らすあらゆる年代の方々と食を通して関わることができます。さまざまなことを学びながら、いずれは自分たちが食べる野菜や米を自分たち手で作ってみたいと思っています」。

 埼玉で生まれ育った千尋さんがなぜ田舎暮らしに憧れたのか、その背景には共働きの両親の存在があった。「私たちを育てるために一生懸命働く父と母の姿を見て、自分はどんな風に生きたい? と考えるようになって。暮らしを中心に置いた時、どんな生き方、働き方ができるのだろうと考えて田舎に暮らすという結論にたどり着きました。生きること、暮らすこと、働くことに自分の中で矛盾がなく、全てがつながっているのが私の理想。それをここで作っていきたい」と穏やかな表情で千尋さんは話す。

 千尋さんの職場は、住まいの裏にある小さな工房だ。ここで米粉や国産小麦粉など、素材にこだわった焼き菓子を作っている。夏は、地元のフルーツを使ったコンポートなどの加工品も手掛け、こちらも好評だ。「家族で過ごす時間を大切にしたいと思ったので、焼き菓子作りを選びました。焼き菓子なら子育てしながらでも作ることができます」。最近は、義父の果樹園で採れる梅を使った梅干しなどの加工品を考えているとも。「自分たちも畑仕事を手伝いながら、栗や柿、キウイなども作っています。ゆくゆくは果樹園を拠点に、人を呼べる場所にしていきたい」と純さんも意欲的だ。「ここに来たことで、暮らしと子育て、仕事がいいあんばいになりました。大事な時期に子どもと過ごせるのが何よりうれしい」と笑顔の純さん。 人の穏やかな暮らしはこれからもゆっくりと続いていく。

Family Data_Case 2

【Name】鈴木 純さん、千尋さん、詩ちゃん
【Migration】完全移住 東京都→山梨県北杜市
【Working Style】起業後に八ヶ岳へ
植物観察家の純さんは本の執筆の傍ら、東京で植物 観察会を行う。
千尋さんは『アトリエこと』を営み、オンラインで焼き菓子を販売している。
【HP】
純さんのHP beyond-ecophobia.com
アトリエこと instagram.com/_atelier_koto_
この記事を取材した人

ライター 小山芳恵
ライター生活四半世紀。八ヶ岳に出合ってその魅力にはまり、ライフワークの一環として八ヶ岳デイズに携わる。


カメラマン 篠原幸宏
1983年生まれ。20代後半の旅をきっかけに写真を始める。現在、長野県を拠点に活動中。

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