森の中で自由に遊び、学び、生きる力を養うオルタナティブスクール『八ヶ岳まあるい学校』。 その立ち上げの経緯と魅力を紹介。
多彩なワークで子どもの可能性を発見し、のばす
木漏れ日が心地良い森の中を進むと、目の前に現れる大きなゲル。周囲には竹や木を組んで作られたジャングルジムやうんていがあり、なんだか楽しそうだ「。これは子どもたちが指導者と一緒にワークで作ったものですよ」と話す代表の佐々木雅之さん(うーじ)。「自然に囲まれて暮らす」という思いをかなえるために、家族で2009年から八ヶ岳に拠点を構えた。
長男の真日人さん、次男の太央人さんと自宅の庭で。
2人とも学区域の学校に在籍し、まあるい学校に通う。
妻の美春さん(たまちゃん)
八ヶ岳まあるい学校
代表の佐々木さん (うーじ)
学校を作ろうと思ったきっかけは、古代土笛奏者として関わったシュタイナー学園の音楽活動で「自然の中に学校を作って子どもを育ててみては?」と言われたことが影響したという。「え? 学校を作る? と最初は驚きましたが、息子たちも大きくなってきて、こんないい環境なのに学校の教室の中にいるのはもったいないと思うようになりました」と、八ヶ岳の仲間たちと一念発起。当初は小淵沢に作ったが、子どもたちが増えて手狭になり、2016年に大泉の森へ移転したという。「特にコロナ禍では、休校にならない、マスクをしなくていい学校に子どもを入学させたいと、海外からの移住者や問い合わせも増えて。子どもたちの会話にも英語が自然に飛び交っています」と佐々木さんは笑う。
くるみの木々に囲まれた森の中にある学校。奥に見えるのは、
指導者と一緒に作ったティピー、アスレチック、竪穴住居だ。
学校の1日はゲルの中に集まって朝の会から始まり、午後からは多彩なワークを行う。ワークの指導者は八ヶ岳に住む〝その道のプロ〞だ。建築の職人と共にコンポストトイレを作ったり、アーティストと一緒に天然素材で蚊取り線香を作ったり 。「特に忍者の末裔の方に教えていただく忍者ワークが人気ですよ」と佐々木さんは笑顔だ。
こうしたワーク参加は義務ではない。ここで一番大切にしているのは、子どもたちの主体性と自主性だ。さまざまなワークを通して、子どもたちは自分の好きなことを見つけていく。「自炊デイで料理に目覚める子や、将来は刀鍛冶になりたい! なんて言う子もいて。
ここでは火や刃物もみんなが自由に使えるので、それで好きになったのだと思います」。
モンゴルから輸入したゲル。子どもたちはどこに 座っても何をしても自由だ。
雨の日は全員が集まってにぎやかに過ごす。
なんと、校則や体験入学者の入学も子どもたちがミーティングをして決めるという。「どんなことも話し合いが行われてルールが決まります。スタッフは基本的に子どもたちを見守り、手助けが必要な場合はサポートするという体制です」。最近はワークが子どもたちの発案によってプロジェクト化している。「新聞プロジェクトや絵本プロジェクトなど自分たちがやりたいことを考えています。社会ではお金がいるから、マルシェをやろう! と、2カ月に1回マルシェを開き、稼いだお金は次の商品作りの資金にしていますよ」と佐々木さん。社会参加への意欲もここの活動で自然に培われるのだ。
まあるい学校の校歌。
歌詞には子どもたちの名前が入っている。
子どもたちが作った焼き物。
子どもの自主性を養うこの取り組みで、変化が訪れた子も。「誰とも一言も話さなかった子が、体験入学を通して自ら入学を希望し、家族も決意して移住しました。強制はせず、あくまでもその子の自主性を重んじて接していましたが、今では自分から友達やスタッフと積極的に話すようになり、家族も喜んでいますよ」。
今後は持続のために法人化の計画もあるという。子どもたちが生きる力を養い、自分の手で自分の未来を見つけられる場所だ。
DATA
八ヶ岳まあるい学校
【エリア】山梨・北杜市
【電話】090・9823・1139(うーじ)
【住所】山梨県北杜市大泉町西井出「くるみの森」
【営業時間】月・火・木・金の10:00~15:30(祝は休校)
【その他】オフィシャルHP:まあるい学校.jp
この記事を取材した人 ライター 小山芳恵 ライター生活四半世紀。八ヶ岳に出合ってその魅力にはまり、ライフワークの一環として八ヶ岳デイズに携わる。 カメラマン 篠原幸宏 1983年生まれ。20代後半の旅をきっかけに写真を始める。現在、長野県を拠点に活動中。