素材や調味料も自らの目と舌で厳選
信濃境駅からほど近く、レトロな建物の中でひっそりと営む和食の店。「コンセプトは、気軽においなりさんが楽しめる店です」と穏やかな口調で話す店主の冨永竜子さん。日本料理店などで腕を磨き、10年ほど前から「自分の店を」と物件を探していたところ、この場所を引き継ぐことになったという。「最初は炊きたてのご飯とおかず、と考えていましたが、 1人でできることを考えておいなりさんにしました」と冨永さん。
地元の卵を使った優しい味わいの白いだし 巻き玉子¥700(写真は半分)
北海道産のクリームチーズを使ったチーズケーキ¥500 はふわふわの軽い食感。コーヒー¥500
冨永さんが大切にしていることは「すべて手作り」。スペシャリテのいなりずしにつくガリも自分で仕込み、酢飯に忍ばせるサンショウも手摘みして佃煮にする。使う素材や調味料も自分でしっかりと吟味したものばかりだ。余分な油を落としてじっくりと時間をかけて柔らかくなるように煮込んだ揚げ、香りを大切にして軽めに仕上げた酢飯で作るいなりずしは優しい味わい。大ぶりだが、 3個ぺろりと平らげてしまうほどおいしい。
また、いなりずしと一緒に供される季節のすり流しも人気だ。ほのかに土の香りが漂う菊芋のすり流しはとろりと濃厚でまろやかな味わい。「お客さんには『和風のポタージュ』と説明します」。そんな冨永さんの話にもうなずける。
木目とコンクリートが調和したシンプルな店内。壁の一部は金属工芸を手がける竜子さんのご主人が仕上げた。
いなりずしのセットを堪能した後は、おいしいコーヒーも楽しみたい。豆は無農薬栽培のものを使用し、冨永さんのご主人が手回しの焙煎機を使って丁寧に焼き上げる。深煎りならではの深いコクと上品な香りが漂うコーヒーは、まさにぜいたくな一杯。軽い口溶けのチーズケーキとも相性抜群だ。「この場所になじんで、何十年先も愛され続ける店になれたらうれしい」と話す冨永さんの心のこもったメニューと、緩やかに流れる時間に、心がホッと癒やされる。
DATA
- 禾々
- 【エリア】長野・富士見町
- 【電話】090・4366・1337
- 【住所】長野県諏訪郡富士見町富士見境7828-1
- 【営業時間】11:30~16:00 (L.O.15:00)
- 【定休日】 月、土、日、祝
- https://www.instagram.com/kaka_oinari
この記事を取材した人
ライター 小山芳恵
ライター生活四半世紀。八ヶ岳に出合ってその魅力にはまり、ライフワークの一環として八ヶ岳デイズに携わる。
カメラマン 村山直章
名古屋生まれ、札幌育ち。大学と写真専門学校を卒業後、アシスタントを経てフリーに。雑誌、新聞、広告を中心に幅広く活動中。