移住をする際に重要となる住まい。どんな家に住みたいのか、建てるのか借りるのか、いろいろ考えるだ けでもワクワクするが、探すのはなかなか大変でもある。そんな移住者をサポートするのが、八ヶ岳で不動産業を営む森岡保紀さんだ。
「皆さんに天の恵みが来るように」との会社名。
「都会にはない人の温かさも魅力。ご近所さんが玄関 先に野菜を置いていってくれることも」と妻の智子さん。
もとは大阪に住んでいた森岡さんが八ヶ岳に移住したのは2014年のこと。「ちょうど娘が小学校に上がるタイミングで自由な校風の学校に入れたいと考えていて。『八ヶ岳サドベリースクール(※現在は閉校)』を見学に行ったら、娘が帰りたくないと言うから移住することに決めました」と話す森岡さん。「とはいえ地縁もなく、不動産の仕事しかやっていなかったので、自分に何ができるのか模索しました」。サドベリースクールのスタッフをはじめ、FM八ヶ岳のパーソナリティーなどさまざまな仕事をしてきたが、次第に生活が苦しくなってきたという。「社会に対して自分は何ができるか? と考えたときにやはり不動産の仕事しかないと思いました。自分も移住者として、これから移住をしようとする人々の助けになりたいと思いました」。
どういう物件がいいのか、他社の物件とも比較しながらお客さんのニーズを引き出していく。
森岡さんは、相談に訪れる人たちの夢やニーズにあった提案をするように心掛けているという。「八ヶ岳に住んで馬を飼いたい、という人がいましたが、それに適した物件を探すのではなく、家で飼うよりも近隣の牧場に預けて会いに行っては?とアドバイスしました」と森岡さん。また就農を考える人には標高が低く他の農家と連携しやすい場所を提案し、時には移住に関する家族や仕事の悩み相談にのることもあるという。「八ヶ岳に来てよかった、と思ってもらえるようにその人に合った物件を提案することを大切にしています。お客様自身が気づいていない心の内側にある希望を引き出すことができると嬉しいですね」。 八ヶ岳に住む魅力は? と尋ねると「個性的な方が多いことですね」と笑顔で話す。「大阪で仕事をしていた頃とはまた違う、作家や音楽家など、仕事を通して多くの方とつながりができました。大阪で暮らしていた頃では考えられなかった人の輪が大きくなっていくことが楽しいです」。
建築中の家を確認するのも森岡さんの大切な仕事のひとつだ。
天惠不動産や森岡さんの考え方を記したパンフレッ トをお客さんへ配布。
不動産は全国の物件が扱える仕事ではあるが、その土地の気候や風習など、表面には見えないことも たくさんある。「今でも、八ヶ岳周辺の物件について勉強することはたくさんあります。なるべく地元の不動産業者さんともつながりを持って、情報を共有しながら仕事を進めていきたいと思っています」と森岡さんは話す。「この仕事の魅力は、お客様の夢が実現して喜ばれる瞬間。みなさんそれぞれにストーリーがあって、八ヶ岳でそのストーリーを形にしていきたいというワクワクとしたことに自分も関わりを持てるのが嬉しいです。この仕事を通して、家を売りたい方、貸したい方、引っ越してくる方それぞれの思いを叶えるお手伝いをできたら一番と考えています」。
【Name】森岡保紀さん
1972年大阪府出身。大学卒業後、大阪の不動産会社で23年間勤務し、2014年に八ヶ岳へ移住。2018年に「天惠不動産株式会社」を設立。八ヶ岳エリアの土地や家など多様な物件を扱っている。
【他】天惠不動産公式サイト(ここをタップ)
この記事を取材した人 ライター 小山芳恵 ライター生活四半世紀。八ヶ岳に出合ってその魅力にはまり、ライフワークの一環として八ヶ岳デイズに携わる。 カメラマン 篠原幸宏 1983年生まれ。20代後半の旅をきっかけに写真を始める。現在、長野県を拠点に活動中。