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未来の暮らしを体験する
完全オフグリッドキャンプ
『オフグリッド・リビングラボ八ヶ岳』

2023.3.10 体験する

自律分散型インフラの実証実験をスタート

 八ヶ岳ブルーの空に映える、白く愛らしいフォルムのインスタントハウス。一見すると洒落たアウトドア施設のように感じられるが、ここで行われているのは、既存のインフラに頼らない、 100%オフグリッド(既存の電力に頼らない)の暮らしだ。

 このプロジェクトを手掛けるのは、株式会社LIFULL(ライフル)が運営するコミュニティ型多拠点コリビング『LivingAnywhere Commons』の八ヶ岳北杜拠点プロデューサーの渡鳥ジョニーさんと、既存のエネルギー供給を超えた新たな社会システムの創出を行う『U3イノベーションズ合同会社』の川島壮史さん。ジョニーさんらがこの場所でオフグリッド生活の実現をめざして動き出したことに賛同し、川島さんが今回の企画を提案。オフグリッド生活の実証実験がスタートした。

 きっかけは、ジョニーさん自身のライフスタイルでもあるバンライフだった。「ソーラーパネルを車に積んで、備えたタンクに水を貯めて、排水タンクも蓄電池も車に搭載する。それでも、生活には限界はありました」とジョニーさん。「固定された家に住むという概念から脱却し、誰もがどこでも好きなところで暮らせるようになるには、インフラを完全なオフグリッドにする必要がある。この『LivingAnywhere』が持つ概念を実現するために、LIFULLとU3の力を借りて、実証実験を行いました」。

 川島さんもまた、暮らしに必要なインフラについて自分たちで作れないかと考えていたという。「私たちが生活で使うエネルギーのほとんどは、火力や原子力などの大規模発電所に依存しています。カーボンニュートラルや少子高齢化が叫ばれるこれからの時代は、持続可能性の高い自律分散型の会インフラを組み合わせることが重要。その自律分散型の生活をここで実験し、社会に役立てたいと思っています」。

インフラはもちろん インテリアにもこだわる

 オフグリッド生活の要となるインスタントハウスは、膜と断熱材のみでできたコンパクトな構築物。通常の住宅に使われる断熱材の約2倍を使う外壁は寒暑や風雨、強風にも耐えられる。「冬は室内にホットカーペットを敷きます。暖房器具も配置はしますが断熱性能が高いので、ホットカーペットの暖気と人の体温で十分に暖まります」と川島さん。

 水は、新興国などでも利用されている逆浸透膜浄水システムを使用。不純物を取り除いて活用できる循環システムだ。「旅先で一番困ったのはシャワーや洗面。インフラの整備が進んでいないところでは不快な思いをすることがありました」と振り返るジョニーさん。「インフラが快適だとQOL(生の質)も上がり、アウトドアや旅自体がもっと楽しくなります」。

 リビングにはロフトがつき、ベッドスペースが設けられている。「ちゃんとくつろげて、きちんと眠ることができる空間にしたかったので」と笑顔のジョニーさん。デスクも設けられ、仕事にも活用できそうだ。

ハイテクとローテクを融合したアウトドア

 快適な環境を整えつつも、焚き火やバーベキューなど自然の中で過ごす楽しみもきちんと用意されている、それもまたここでの生活の魅力。昼間はアウトドアや仕事を満喫し、夜は満天の星空を仰ぎながら焚き火を囲む。まさに仕事は都心で、アウトドアはローテクで、という概念を心地良く覆してくれる。「今後はオフグリッドシステムをもっとコンパクトにして、トレーラーハウスにも搭載できるようにしたい。そうすれば国内外のどんな場所でも、旅や暮らしを楽しめるようになります。オフグリッドは、人があきらめていた場所で暮らすことができるためのツールです」とジョニーさん。川島さんも「自律分散型のオフグリッドシステムなら、災害時でも不安なく暮らすことが可能です」 と話す。

 23年より、ジョニーさんらはアウトドアホテル『TENAR(テナール)』を展開している株式会社CountryWorksと共に、『The Unique Stay withTENAR』をスタートさせた。“環境に対する学び”をテーマに用意された新たなフィールドは、前述したオフグリッドグランピングはもちろん、夜更けまで楽しめる特別感のあるプライベート空間など「持続可能なリゾート」としての機能も充実。隠れ家に包まれるような、心あたたまる旅を楽しめそうだ。

【ご予約・詳細はこちら】https://tenar.jp/field/yatsugatake_lac_field

教えてくれた人

『LivingAnywhere Commons』八ヶ岳北杜拠点プロデューサー
渡鳥ジョニーさん
デジタルノマドとして全国各地を回りながら、バンライファーなどの新たな暮らし方を模索・提案。2020年より本プロジェクトのプロデューサーとして活躍。
教えてくれた人

U3イノベーションズ合同会社 ダイレクター
川島壮史さん
東京大学大学院理学系研究科修了後、コンサルタント・大企業・スタートアップの立場で、一貫してエネルギーを中心とした新規事業創出に取り組む。2020年より参画。

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DATA

この記事を取材した人

ライター 小山芳恵
ライター生活四半世紀。八ヶ岳に出合ってその魅力にはまり、ライフワークの一環として八ヶ岳デイズに携わる。


カメラマン 篠原幸宏
1983年生まれ。20代後半の旅をきっかけに写真を始める。現在、長野県を拠点に活動中。

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