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多賀純夫の「多賀屋」な日々【第1回】八ヶ岳での雀たちとの生活を夢見て

2024.5.1

わたしの「八ヶ岳デイズ」

八ヶ岳に暮らすあの人この人の日々の暮らしをお届けする連載企画。
この地の風土の中で感じる四季の移り変わりから、
暮らしの中で見つけたちょっとした発見、地域の耳寄り情報などなど。
八ヶ岳の魅力を知り尽くした人々が、
それぞれの視点で「八ヶ岳デイズ」を発信します。

給餌台を庭に設え、鳥を愛でる日々

庭の給餌台に雀用のエサを撒いて遊んでいますが、近頃雀達はあまり来ません。5月、彼らはきっと子育てに忙しいのです。雀は3月から8月の間に2回から3回の子育てをします。巣立ちまで約2週間の間、約4.200回、一日にすると約300回エサを運ぶのだそうです。目が回る忙しさですね。そればかりか、巣の中のフンもせっせと片付けて、巣をいつも清潔な環境にし、おまけに、巣立ってもしばらくはエサを与えたりしてケアをする。じつに健気ではありませんか。毎日が日曜日の私は、給餌台にエサをあげたり忘れたりして好き勝手に生活しているのを恥じ入るばかりです。

給餌台の雑穀類はヒナたちにはきっと消化に悪いのですね。この時期は小さな虫たちが様々な場所に溢れ出ているので、ヒナ達にやるそれら良質なタンパク質を見つけるのに忙しいのでしょう。ときどき庭の芝をつついて虫か何かを探している姿は微笑ましいけれど、彼らは必死なのです。がんばれ雀たち。

愛しの雀・ウィリアム君に出会うため、雀一羽一羽を観察

 ところで肝心の巣はどこかと探しても見つかりません。雀は木の枝の上に巣をつくらないのです。屋根瓦、物置、車庫など、人工構造物の隙間を見つけ(人間の暮らす近くに)巣をつくるのです。天敵から身を守るのに好都合なのでしょう。探しても見つかりませんが「100m四方に4.5個はある」と書かれた記事がありました、ホントかなあ。無理に探して彼らを脅かしてはいけませんが、ファーブルも「パレスチナにラクダのテントしかなかったとき、スズメたちは一体どこに巣をつくっていたのだろうか」と書いて心配しています。そのうち双眼鏡で後追いをして発見してやろう♪繁殖期は別々に生活を営む彼らも、秋になればまた集団で暮らすようになります。30~40羽で給餌台にやってくる群雀たちを見ていると一羽一羽性格が違うのが手に取るように分かります。私の目標は、雀の個体識別が出来るようになる事と、雀と意思疎通ができるようになる事です。最終的には手なずけた一羽の雀の一生を追ったドキュメントが書けないか、と考えています。彼(例えばウィリアムと名付けた雀)と会話しながら、一緒に生活し、ウィリアム君の一生の苦労や災難、喜びや誇りなどを聞き出して1冊の本にするのが私の雀観察趣味の総仕上げかな、と夢想しています。

イギリスに実在した雀と暮らす人

 実際にそれに近いことをやった人がいるから驚きです。クレア・キップスというイギリス夫人で、彼女は偶然庭に落ちていた生まれたばかりの雀を育て、12年間一緒に暮らしました。クラレンスと名付けられた雀は、夫人と一緒の部屋で生活し、一緒のベッドに寝て、夫人がピアノを弾くと、そばで歌い、夫人のベッドに他人が入ろうとすると大声で鳴いて威嚇します。夫人がこの素晴らしい雀との生活を記録し出版しようとカメラマンを呼んだ時も、喜んで撮影の要求に応えた。いよいよ老衰し体が弱ってきたクラレンスに夫人がふざけてシャンパンをスプーンで与えたら飲んでくれて元気になりましたが、薬をスプーンに入れて飲まそうとすると、がっくりと頭を落とし、視線をそらしたそうです。1952年にイギリスで発行された「ある小さなスズメの記録」という本をご一読下さい。とても不思議で愛らしいクラレンスと夫人の日々。 こんな本を読みながら庭の雀にエサを与える生活はいかにも老人臭いが、八ヶ岳でなら、そんな日々にある日奇跡が起きそうな気がする。私のもう一つの趣味は散歩(あ、また老人臭い)だが、いつかどこかで「きき耳頭巾」を拾いそうな気がしてなりません。

この記事を書いた人


多賀純夫(たがすみお)

神奈川県から八ヶ岳南麓(山梨県北杜市長坂町)に移り住んで開業したペンションを25年で閉じ、子供たちも巣立ったので、現在かみさんと二人で「帰ってきた青春」を楽しんでいる。若者たちを相手に「婚活イベント」を年間30回ほど開催したり、年寄りたちを相手に「ウオーキングの会」を組織して年間40回ほどのウオークイベントを実施しており、第二の青春もなかなかに忙しく楽しい。昭和25年生まれなのでそろそろ体にガタがき始めているが、目下の目標は「晩酌を止めないで、数値を良くし、腹を凹ます法」の開発。

TAGAYA

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