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米とビールづくりを通して北杜市の魅力を広めたい<植松聡さん>

2025.1.10 暮らす

 彼方に八ヶ岳の稜線を望む、長坂町の中山間地域。山裾にのどかな田園風景が広がるこの場所は土壌がよく、気温の寒暖差がはっきりしていて、おまけに八ヶ岳の湧き水もあるからおいしい米が育つ。「以前から北杜市の米はおいしいと思っていたけれど、日の目を見ないのが歯がゆかったですね」と話すのは、 ここで米づくりを行う植松聡さんだ。

 植松さんは、おいしい米づくりを目指して福島県の『ふるかわ農園』 へ見学に行き、そこで漢方の生薬を煎じたかすをぼかし肥料に使う農法を学んだ。「さっそく自分流を一切やめて漢方ぼかしを使った農法に切り替えました。 漢方の好気性菌が有効に働き、稲本来の力が強くなり、病気に罹患(りかん)する率も低くなる。結果として、農薬や化学肥料は不使用になりました」と植松さん。 こうして作られた米“光穂 mitsuho GOLD”は、甘みと香りが強く、もっちりとした食感が特徴。北杜市主催のコンクールで見事3回も授賞している。「昔は無農薬の米が多かったからでしょうか。『昔食べた懐かしい米の味がする』ってよく言われます」と植松さんは笑顔だ。

 また植松さんは「北杜市のおいしい米をもっと世に広めたい」と、小菅村にある、東京のクラフトビール会社『ファーイーストブルーイング』を訪問。そこで、自分たちの米を使ったビールを作りたいと考えたと話す。 「ファーイーストブルーイングは、摘果した桃を使ってビールを作っている。ならば米でもクラフトビールを作れるのでは?と考えて、さっそく企画を持ち込みました」。商品開発担当者と話し合いを重ね、昔のどぶろくづくりの技術の一部を使ってクラフトビールを作ることに。原料となる米を提供してくれる10軒の農家で「もりともりのひとたち」という部会も立ち上げた。「米をビールにしたら面白い、どんなものになるか分からないが作ってみようということになりました」と植松さんは当時を振り返る。

 お米を使ったビール「Far Yeast もりともり RICE ALE」は、2022年に商品化。飲んだ瞬間、ほのかな甘みを含んだフルーティーな味が広がり、その後に苦みと米の香りが感じられる上品な味わいだ。「最初に仕込んだ3000リットルはなんと3日で完売しました」と 笑顔で話す植松さん。最初の売れ行きを受けて翌年は2回仕込んだが、こちらの売れ行きも順調だ。「私は“もりともりのひとたち”の代表として、原料となる米を取りまとめたり、ビールについての意見のすり合わせを行っています。今年の仕込みがうまくいけば、 ゆくゆくは国内だけではなく世界にも広めていきたいと考えています」。

【Name】植松 聡さん 
1983年生まれ。北杜市出身。実家が農家だった影響を受けて農業を志し、米農家に。「北杜市の豊かな環境を守り次世代につなげたい」という思いから、無農薬栽培を行う。クラフトビールもプロデュース。 
この記事を取材した人

ライター 小山芳恵
ライター生活四半世紀。八ヶ岳に出合ってその魅力にはまり、ライフワークの一環として八ヶ岳デイズに携わる。



カメラマン 荻野哲生
1986年生まれ。旅する写真家。「写真からストーリーが伝わるように心がけています」。

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