八ヶ岳デイズ

Facebook
八ヶ岳デイズ >  働く八ヶ岳のモノ食べる > 八ヶ岳の気候にほれ込んだ 2人が作るこだわりの生ハム<八ヶ岳トロバール> 

八ヶ岳の気候にほれ込んだ 2人が作るこだわりの生ハム<八ヶ岳トロバール> 

2025.2.7 働く八ヶ岳のモノ食べる


 豚肉専門フレンチの料理人と、料理が趣味のビジネスマンが出会い、 お互いの夢と向上心が重なりスタートした八ヶ岳での生ハム作り。 茅野の冷涼な気候に包まれじっくりと熟成された極上の一品ができつつある。

「生ハムを作りたい」茅野で膨らむ2人の夢

 一定の温度に保たれた部屋でじっくりと熟成される、いくつもの肉の塊。表面を白く覆うカビを見ながら「きれいでしょう?見慣れてくるとかわいいウサギのように見えますよ」と笑うロバート・アーサー・コーネルさん。生ハムを作り始めたきっかけは、足しげく通った東京のフレンチレストラン『ラ ブーシュリー グートン』のオーナーシェフ、郷卓也さんと生ハム作りの話が盛り上がったことだ。

 「郷さんは以前から店でシャルキュトリーなどを作っていました。私も趣味の料理でパンチェッタを作っていたので、一緒に生ハムを作ろうという話になって。コロナ禍で店の営業が縮小され、苦戦していた郷さんを助けたいという思いもありました」。郷さんとコーネルさんは意気投合し、二人三脚の生ハム作りがスタートした。

 コーネルさんは以前から手に入れていた茅野市の古民家へ完全移住。生ハム作りに適した気候だったことが一番大きいと話す。「朝と夜で寒暖差があり、真冬以外は湿度もちょうどいい。生ハムの熟成にはぴったりの気候です。それに、ここの人たちはみんないい人ばかりで、この人たちとのつながりでおいしい生ハム作りできるというイメージがありました」。


 生ハム作りには当然、熟成室や加工室も必要だ。コーネルさんと郷さんは地元の『長嶺精肉店』の紹介で、市内のホテルの協力のもと、一時的に熟成室と加工室を借りている 。「 こうした人の優しさにいつも助けられていますね。本当にありがたいと感じています」(コーネルさん)。

豚肉の質にこだわり 八ヶ岳の気候を活用

 2人は生ハム作りの土台ともいえる豚肉の仕入れについても『長嶺精肉店』に相談。そこで八ヶ岳中央農業実践大学校の八ヶ岳山麓放牧豚プロジェクトを知ったという。豊かな自然環境の中、ストレスフリーで育った豚は、独特の臭いもなくうま味が濃い。「ぜひこの豚肉で生ハムにチャレンジしたいと思いました。まずは私たちも、もも肉を10本買って作り始めました」(コーネルさん)。

 また、郷さんが店でも使用しているマンガリッツァ豚、LYB(ルイビ)豚、セレ豚など希少な豚に加え、皮付きの神戸ポークも仕込み始めた。「選ぶ基準として、それぞれ味が異なる豚の原種にこだわって差別化を測りたいと考えています。理想の生ハムにはどの豚の原種がいいか毎回試行錯誤です」 と語る郷さん。


 熟成室には、これらの豚肉が整然とぶら下げられている。生ハムを熟成させる過程も大切に、安全な環境づくりを整える2人は、熟成室に加湿器を入れて常に最良の湿度をキープしている。「このあたりは八ヶ岳の吹き下ろしがあるから、時に乾燥しすぎる時もある。乾燥しすぎるとジャーキーになってしまいますからね(笑)。しっとりとした食感とうま味を保つには、湿度も大切です」(コーネルさん)。

 仕込み始めて4年が過ぎ、分かってきたこともあるのだとか。 「例えばLYB豚やセレ豚で作ると味は抜群においしいけれど、可食部が少ない。こうしたデータを取りながら、それぞれの生ハム作りに適した豚肉を厳選していければ」(郷さん)。そうして仕上がった生ハムはまだ限られた場所でしか販売していない。「少しずつ販路を拡大して、まずは地元の人たちがおいしいと言ってくれるように頑張りたい」と微笑むコーネルさん。将来的には生ハムの高級なイメージを払拭して、もっとリーズナブルに味わってもらえるようにしたいとも。「切りたてのフレッシュな生ハムのおいしさを体験できる環境で販売をしていくのが目標です」(コーネルさん)。

ロバート・アーサー・ コーネルさん(左)
郷卓也さん(右)
コーネルさんは来日35年。 2014年にシカゴ東京メディカル(株)を設立。郷さんは2015年豚肉専門のビストロ「ラ ブー シュリー グートン」を開業。

DATA

この記事を取材した人

ライター 小山芳恵
ライター生活四半世紀。八ヶ岳に出合ってその魅力にはまり、ライフワークの一環として八ヶ岳デイズに携わる。


カメラマン 篠原幸宏
1983年生まれ。20代後半の旅をきっかけに写真を始める。現在、長野県を拠点に活動中。





あなたにおすすめの記事

Links
リンク