病気をきっかけに人生を考え、家族で茅野へ。 テンペ作りと店の経営、子どもたちのスピードスケート。 忙しくも楽しい、家族の毎日だ。
テンペの魅力を広めるため 夫婦で二人三脚の日々
左/ピリ辛味をきかせたテンペ麻婆豆腐弁当¥690。右/食べやすいテンペ天むす¥580。食材は植物性にこだわる。
テンペとは、インドネシア発祥の大豆発酵食品のこと。発酵食品とはいえ納豆のような匂いや粘りがないため食べやすく、さまざまな料理に使えるとあって昨今は健康食材として注目されている。
2人でアイデアを出し合いながら新作メニューを作ることもある。
「徐々にリピーターも増えてきています」。
このテンペに魅せられ、テンペ作りにはまり、ついにはテイクアウト弁当の専門店まで出した大友章義さん。もともと東京で物流のコンサルタントとして働いていたが、2017年に家族で茅野市へ移住した。そのきっかけは病気を患って人生を考える時間ができたことだと話す。「コンサルタントの仕事はどこにいてもできるから、いっそ自然の中でのんびり暮らしたいと考えました」。
北海道産の脱皮大豆を使用。
24時間 しっかりと水を吸わせる
成形して33度で保温し発酵させる。
40度を超えるとテンペ菌が死滅するので温度管理 は重要だ。
固まったテンペの水分を十分に拭き取って、発酵を止めるために冷蔵庫 へ。
大豆同士がしっかりとくっついた断面。
3日間以内に使い切らない場合は冷凍庫で保管
テンペに出合ったのは、移住して3年目のことだ。「テンペの唐揚げを初めて食べて、肉じゃないのに満足感があることに感動して自分で作りたいと思いました」と章義さん。試行錯誤を重ねて思い通りのテンペが作れるようになり、2021年に店をオープン。テンペの麻婆豆腐や魯肉飯など食べごたえ満点のものばかりだ。妻の由紀子さんがレシピを考案し、体に優しい多彩な弁当を提供し続けている。
子どもたちのスポーツを全力で後 押しする章義さんと由紀子さん。
家族みんなで話す機会も増え、よ り一層絆が深まった。
茅野市で章義さんがテンペと出合ったと同時に、娘ののどかさんと息子の信二くんもスピードスケートという夢中になれるスポーツに出合った。「きっかけは学校からの案内でした」と章義さん。実は茅野市はオリンピックで活躍した小平奈緒選手の出身地であり、スピードスケートが盛んな土地。練習場も充実していることから、2人ともすぐにのめり込み、実力を発揮して大会でも好成績を収めるほどに。章義さんや由紀子さんも子どもたちのサポートに余念がない。「子どもたちの送り迎えとテンペ作りをうまく両立して頑張っています。ここに移住したおかげで子どもたちが好きなことに出合えて本当に良かったと思います」と章義さんはうれしそうだ。「東京にいた頃は、父親として子どもに何かできることはないか?と模索していましたが、スピードスケートのサポートを通して2人の気持ちがより理解できるようになったと感じています」。
のど かさん、信二くんのスケート靴。
また由紀子さんも、自身が変化して世界が広がったという。「東京では自転車移動ばかりでしたが、茅野市へ来てペーパードライバーを払拭し、車に乗れるようになったおかげで、子どもと一緒にいろいろな場所へ行けるようになりました」。都心とは違って自然が近いため、休日は思いつきで行動することもある。「今日は晴れたからキャンプに行こう! とか(笑)。特別なことは何もしませんが、家族で一緒に過ごし、楽しい経験をする時間が増えて、人生がより充実したと思っています」。
信二くんは長野県で 見事1位を獲得。
のどかさんも茅野市の大会で1位と2人ともすっかりのめり込んでいる。
東京では朝から晩まで必死になって働き、一日の変化にも気づけなかったと章義さん。「ここで見られる美しい夕日が、一日の終わりに夕日があることを思い出さ
せてくれました。家族との時間も増えて、みんなの些細な変化にも気づけるようになった。自分の心にも向き合える時間ができて良かったです」。
家族それぞれがやりたいことを見つけ、気づきと絆を深める。充実と幸福に彩られた、大友家の毎日だ。
Family Data_Case 3 【Name】大友章義さん、由紀子さん、 のどかさん、信二くん 【Migration】完全移住 東京都→長野県茅野市 【Working Style】八ヶ岳で起業 夫婦で弁当専門店「テンペキッチン」を営み、テンペ のネット通販も行う傍ら、章義さんは物流コンサル タントとして全国各地へ赴く。
- テンペキッチン
- 【エリア】長野・茅野市
- 【電話】050・3743・9803
- 【住所】長野県茅野市宮川4303-1-2
- 【営業時間】11:00~13:30
- 【定休日】月~木、日、祝 (冬は月~水、土、日、祝)
- 【その他】tempe-oneface.com
この記事を取材した人 ライター 小山芳恵 ライター生活四半世紀。八ヶ岳に出合ってその魅力にはまり、ライフワークの一環として八ヶ岳デイズに携わる。 カメラマン 篠原幸宏 1983年生まれ。20代後半の旅をきっかけに写真を始める。現在、長野県を拠点に活動中。