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高原暮らしで紡ぐ
仕事への意欲と家族の濃密な時間

2024.8.16 暮らす

 自然に囲まれた暮らしを夢見て探し歩き、ついに出会った2人の理想郷。
朝な夕なに出合う美しい高原の景色にインスピレーションを受けて、ここで仕事や創作活動、豊かな家族の暮らしを営む田井中夫妻を紹介。

都会での生活を経て八ヶ岳で理想を追求

 標高約1300メートル、日本一高い場所に位置する野辺山高原。すがすがしい空気と深緑に包まれた森の中に、田井中家はある。扉を開けると目に飛び込んでくるのは、広々とした大空間。壁一面に設けられた窓からはさんさんと木漏れ日が差し込み、まるで屋外にいるように明るく開放的だ。

 妻の祐子さんとともに植物を使った装飾を手がける『BITOGreen』を営む田井中将希さんが移住を決めたのは、自然の中で作品づくりを行いたかったことと、娘の心羽來(こはく)ちゃんが生まれたことがきっかけだ。

 「代官山にアトリエがありましたが、時間が空けば自然を求めて東京の郊外をはじめ軽井沢や長野、山梨へと足を延ばしていました。最初は二拠点生活をするつもりで、東京から通える範囲で探していましたが、ピンと来るところが見つからなくて」と将希さん。諦めかけていた頃、祐子さんが野辺山高原の土地を見つけてきた。「とりあえず行こうか、という気持ちで来たらこの風景に一目ぼれしました。木々の緑が透けるように淡くきれいで、日本独特の緑色じゃないところに惹かれましたね。いつかは拠点を持ちたいと思っているヨーロッパの風景に似ているなとも思いました」。

 冷涼な夏はもちろん、冬の過酷さや多少の不便も、将希さんにとっては楽しみだらけだという。芸術大学を出た将希さんにとって、ものづくりは日常的なことだ。「ないものや、ほしいと思ったものは自分で作ります。東京のアトリエには大きな作業場がなかったのですが、ここなら山へ木を取りに行って、家や庭ですぐに作ることができる。次は何を作ろう? と創作意欲が湧きます」。

 また、東京で暮らしていたときよりも、人間関係も濃密になったとも。「移住して1年目には40組ぐらい友人や知り合いが来ました」と笑顔で話す。「彼らにとって、ここは非日常の空間。一緒にゆっくり食事をして、飲んで、サウナもして。森の中で過ごすことで、以前より深く付き合えるようになりました。改めて自然の力や、何もないからこそ得られる豊かさを実感しています」。

ここを仕事の拠点に 湧き上がる創作意欲

 この自然環境と同様に、将希さんと祐子さんは地元の食材の素晴らしさも実感している。「移住して、おいしい食材を使って料理をする楽しさを知りました」と祐子さん。新鮮な有機野菜、広大な農場でのびのびと育った牛から搾取する牛乳、平飼いの鶏が産んだ濃厚な卵。これらを使って作るひと皿は何よりのごちそうだと祐子さんは語る。「都心とは違って買い物も車で30分くらいかかるから頻繁には行けない。だからこそ食材を選ぶ楽しみもひとしおです」と話す言葉に、ここでの暮らしを心から楽しんでいる様子がうかがえる。

 将希さんも毎日をより一層楽しく過ごせるよう、大好きなサウナを庭に自作。これはお客さんにも大好評だとか。「ここでしっかりと汗をかいて、爽やかな外の風を浴びてととのうのは最高。日頃のストレスもすべて吹き飛びます」と笑顔をみせる。

 さらに自然と戯れることや、家族との濃密な時間を楽しむために、テレビを排除することを決めた。「東京にいるときは常に何かに追われながら生きていました。あらゆるメディアから自分にとって必要のない情報が入ってくることも自身のペースを乱すと思い、必要な情報は自分で取りに行くことにしました」。夜は心羽來ちゃんを囲んでゆったりと過ごし、プロジェクターで映画を楽しむ。そんな心地よい家族のリズムも都会ではつくれなかったことだ。

 ここで植物装飾の作品を作りながら、今後は祐子さんと2人で仕事とは別にユニットを組み、新たなアート作品に挑戦したいと将希さんは目を輝かせる。「この八ヶ岳の自然環境から受けるインスピレーションを、写真や映像などで表現していきたい。環境問題もテーマにして作品づくりもして、発信していきたいですね」。八ヶ岳の雄大な自然は、田井中さん夫妻の新たなものづくりに対する大きな刺激となっている。

Family Data

【Name】田井中将希さん、祐子さん、心羽來ちゃん、おまめ
【Date】2022年10月
【Living style】完全移住
【job】緑の装飾事業

将希さんは奈良県出身。大手芸能事務所に所属し、音楽ユニット、俳優として活動した後、祐子さんが営む緑の装飾事業『BITO Green』で一緒に作家として活動している。長崎県・五島列島新上五島町の観光物産大使も務めている。

DATA

BITO Green \ Flower Creatives
【他】instagram.com/bito_green_flower/

この記事を取材した人

ライター 小山芳恵
ライター生活四半世紀。八ヶ岳に出合ってその魅力にはまり、ライフワークの一環として八ヶ岳デイズに携わる。


カメラマン 松本幸治
鳥取県米子市出身。
2001年よりフリーランスカメラマンとして活動。
現在、愛知県を拠点に活動中。

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