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手を動かし、試し、育てる 暮らしと店がとけ合う日々<GEB>

2025.8.29 暮らす食べる

明るい里山の景色の中に現れる食とアートの拠点


2024年10月に北杜市にオープンした『GEB(ゲブ)』。佐多健太郎さんと妻の愛加さんが営むカフェ&アトリエだ。ふたりは10年ほど前から八ヶ岳山麓へ通うように。音楽配信会社に勤めていた健太郎さんは、知人のギタリストの実家が高根町にあったことで、彼の父親「いっちゃん」と仲良くなった。


移住を考える過程で、いっちゃんにも相談しつつ本格的に家探しを始めたという。ギャラリーや音楽ライブでアーティストを招くことを考えていたので、東京から「ギリギリ訪れたいと思える距離」の中で、雪が多くない条件に合うのは軽井沢か北杜だけだった。さらに、明るく開けていそうな場所を地図で探しては「地名 古民家」で検索。そこで見つけたのが陶芸家がアトリエ兼住宅として使っていたこの場所だった。

「僕たちにとってはいっちゃんの存在が大きかったです。丸腰で移住するより何倍も心強い。教えてくれた情報も、ここへ来る際の確かな〝足場〞になってくれました」と健太郎さん。

実際に住んでみて、土地の持つ雰囲気の大切さを再認識したそうだ。気付けば人が集まってくる土地は、生活する上でも、店を持つ上でも大きな助けになっている。

お客さんも感動する野菜〝素材の味〞を楽しめるように


カフェでは健太郎さんが淹れるコーヒーと、地元の野菜を使って愛加さんがつくるブランチやスイーツが味わえる。

愛加さんは移住前から、ケータリングやお弁当販売、カフェの間借り営業などさまざまな形で料理を表現してきた。「移住してからは遊びに出かけるよりも、この土地にたくさんあるおいしい食材を家で楽しむことが増えました」と愛加さん。

ブランチは野菜の味の濃さに驚く。それらは、北杜市の農家『soilship』をメインに、夫妻がここで暮らす中で出合った野菜たち。もちろん、野菜そのもののおいしさもあるが、愛加さんが身に付けた「水分コントロール・火入れ・塩加減」の技術も大きい。

「野菜は使う前日に洗って表面の水分を取っておきます。それを業務用のコンロと鉄のフライパンで火入れすると味が凝縮します」と愛加さんは微笑む。

調味料や副原料に自家製が多いのは、自分の手でつくってみたいという実験精神から。香味野菜を数種類混ぜてつくる野菜こうじや、カンパーニュに練り込むドライトマト、フムスに入れるパプリカパウダー、ソーセージに添える粒マスタードなど、何げない一皿に手間を惜しまないことが、特別なおいしさにつながっている。

コーヒーは、北杜市のコーヒー店『 YORI 』の焙煎豆をGEBオリジナルでブレンド。健太郎さんも自宅で起床後に味わっており、自然とマインドフルになる時間をつくってくれているそうだ。

過去の経験も今の実験も生かして


庭にある半透明の小屋は、シャワー付きの宿泊棟だ。ツーバイフォーで組み、農業用フィルムを張っている。DIYにしては本格的なのは、健太郎さんが建築学科出身だから。「大学時代に予算があればやりたかった」ことだという。この小屋は、いずれアーティスト・イン・レジデンスでも活用したいと考えているそう。「カフェのお客さんやアーティストが出入りすることは、子どもたちにも確実に多くの刺激を与えると思います」(健太郎さん)。

こうした、自身でつくる試みは現在も続いている。「できるだけ自分たちで楽しんでつくるのは、実験するような感覚ですね」と健太郎さん。愛加さんも同じで「次はこんなパンをつくってみたい」「最近夢中になっているフードドライヤーでこの食材を乾燥させてみたい」「自家製ベーコンの次はパンチェッタをつくってみたい」と、アイデアは尽きない。

近くにある畑にもこの春から本格的に取り組む予定だ。「協生農法という、さまざまな植物の種をまくことで畑の中に生態系をつくり出す方法でやってみようと思っています」(健太郎さん)。また、ワイン用のぶどうをつくるための土地探しも始めたりと、食に関連したプランを少しずつ計画している。

店という〝出し先〞があるからこそ、プライベートで試みる〝実験〞で一見無駄なことにも挑戦できると語る佐多さん夫妻。営みを単なる消費で終わらせず生産へと転換していくサイクルは、穏やかな里山の中でゆったりと循環して、今日も一家を育んでいる。

DATA

GEB

【エリア】山梨・北杜市

【住所】山梨県北杜市高根町下黒澤3828-2

【営業時間】カフェ 11:00〜16:00、ブランチ 11:00〜14:30

【定休日】不定休 ※Instagramにて告知

【他】公式Instagram(こちらをタップ)

この記事を取材した人
ライター栗本京子
ライター 栗本京子
大分県出身。2016年に東京から長野県に移住してフリーランスに。台所・料理・食べることが三度の飯より好き。

五味貴志
カメラマン 五味貴志
長野県茅野市出身。八ヶ岳エリアを中心に人や自然、暮らし、食、ものづくりなどの風景を見つめ、その一瞬を切り取ることを心がけている。
「写真を通して、人や地域の魅力が広がり誰かの人生が動き出すきっかけになったら嬉しいです」。

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