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伝説のカフェオーナーが選んだ水の合う場所<真子舞さん>〜暮らし編〜

2026.2.27 暮らす楽しむ
人気のカフェをたたみ、鎌倉から小淵沢に移住してきた真子舞(まなご まい)さん。人生という長い旅路の折り返し地点を過ぎ、暮らしの心地よさをますます深めながら、新しい旅へ踏み出す。

人生の折り返しは自然の中で暮らしたい

18年間愛され2023年に惜しまれつつ閉店した鎌倉の「cafe坂の下」は、古民家カフェのはしりと言われ、ドラマに登場するカフェのモデルになるなど注目を集め続けていた。そのカフェの立役者・真子舞さんは、閉業後に八ヶ岳山麓の住人になった。


「子どもが生まれる前からやってみたかったカフェは、多くのお客さんが通ってくださいましたが、いつしか〝やりたいこと〞から〝生業〞になってしまい、『これでいいのかな』と疑問を感じるようになりました。好きを貫いた亡き父のこと、東日本大震災やコロナ禍を経て、折り返し後の人生のことを考えるようになりました」。


cafe坂の下を始めた頃から、いつかカントリーサイドに住みたいと思っていた真子さんは、小淵沢に友人が移住したことと、蓼科でのウエディングデコレーションの仕事をきっかけに、長野や山梨で移住先を探すようになった。

自分の手を使って一からつくりあげていく

なかなかこれという土地に出会えない中、小淵沢に移住した友人で稲村ガ崎R不動産(現鎌倉R不動産)創業者の藤井健之さんに、「白州をもう一度見てみて」と言われて、小淵沢のアパートで暮らしながら改めて土地を探した。


「とにかく水がいいところで探していました。鎌倉でも趣味で育てていた植物をより良い環境で育て、生活の軸にしていきたいということもあります」。かくして、北杜市武川地区で運命の土地に出会った。笹と樹木に覆われた土地を、友人知人や家族の手も借りながら重機も駆使して整備していった。

森を開墾するのは根気がいるが、「手を使ってめんどくさいことをするのが好きなんです」という舞さんは、大変な作業すらも楽しんだ。ここに家を建て、B&B形式のリトリート民泊をつくりたい――そんな夢もふくらんだ。舞さんの理想が詰まった暮らしを体感しながら、心身をリセットできる民泊の準備も動き出した。

地元食材を組み合わせ手間をいとわず拵える

舞さんの料理好きは、大正モガ(モダンガール)だった祖母と、華道もたしなむ母ゆずり。特にB&B形式のリトリート民泊では、食事も含めたトータルケアを考えている。提供するのは朝食のみ。だからこそ、その内容をどうするかずいぶん悩んだという。

アイリッシュ系アメリカ人だった祖父から伝えられたパンケーキは、cafe坂の下では看板メニューになり、今もあの味が食べたいというファンもいるほどだった。しかしリトリートという目的に照らせば、多くの人がほっとできる朝ごはんは炊き立てのごはんとお味噌汁、和のお惣菜ではないかと考えた。


味噌汁は「たてしな自由農園」で手に入る信州味噌仕立て。玉子焼きは「ROOSTER HENHOUSE」の卵を使い、赤いジュースはビーツ、人参、しょうが、夏りんごのコールドプレス。加熱しないので香りも栄養もそのまま体に入っていく。野菜はすべて山梨産だ。土地の滋養に舞さんの手仕事が加わることで、とっておきの朝ごはんになる。

生活を大事にしながらやりたいことを叶える

北杜市は、鎌倉在住時代からの友人の藤井さん曰く「昔の鎌倉のにおいがする」そう。山口県出身で全国35ヵ所は引越しを経験した藤井さんは、生活を大事にしながらやりたいことをやる空気が満ちた当時の鎌倉に住み、カルチャーショックを受けたという。「時が経ち、鎌倉は暮らしにくくなってしまったように感じます。北杜市は、かつての鎌倉のような居心地の良さと自由な雰囲気があります」。


移住にあたっては、次女・海里(かいり)さんも同行した。「一から立ち上げる経験をしたい」と、土地の開墾もカフェの開業も一緒に取り組んだ。舞さんは、リトリート民泊の開業という次の夢に向かって奔走している。

真子舞(まなご・まい)
GASBON METABOLISM内にオープンしたカフェ「HALENOBON」オーナー。2025年秋からはリトリート施設とB&Bを兼ねた「canoe retreat&stay」が、自宅の一角にて始動する。鎌倉で生まれ育ち、カフェやギャラリーを運営していた。2023年に小淵沢に住むようになり、2024年、北杜市武川地区に家を建てた。

※取材は2025年夏に行いました。

この記事を取材した人
ライター栗本京子
ライター 栗本京子
大分県出身。2016年に東京から長野県に移住してフリーランスに。台所・料理・食べることが三度の飯より好き。


カメラマン 篠原幸宏
1983年生まれ。20代後半の旅をきっかけに写真を始める。現在、長野県を拠点に活動中。

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