北杜市を再びホップの産地にするため、新たな品種へと改良。 フレッシュで香りの強い、良質なホップづくりに取り組む農園を紹介。
地元の品種を守るため ホップ栽培をスタート
ビールづくりに欠かせないホップ。 耐寒性に優れ、雨の少ない冷涼な気候を好むホップは八ヶ岳エリアでの栽培に向いている。しかし、かつては北杜市内に700軒ほどあったというホップ農家も、専業は『小林ホップ農園』 1軒だけだ。「今、国内のホップ農家は大手ビールメーカーと契約しているところのみです」と話す代表の小林吉倫さんが、ホップ栽培に乗り出したのは2015年のこと。子どもの頃に見た八ヶ岳の田園風景に荒れ地が増えたのを見て「何かできないか」と北杜市ならではの農産物の付加価値を調べる中で、北杜市に1軒だけ残っていたホップ農家の人と知り合ったという。「栽培を続けているのは“カイコガネ〟で、地元のホップの品種を守るためだということでした。しかしもう少しで辞めるという話を聞いて、それなら自分がホップ栽培をやろうと思いました」。
ホップは植栽してから5~6年たたないときちんとした収量が取れず、年に1回しか収穫できない上に、取引価格は50年前から変わらないという。また、栽培に手間がかかるのも特徴だ。「大手のビール会社が求めるフレッシュホップに対して栽培スケジュールを考えなくてはなりません」と小林さん。「病気にしないよう、こまめな消毒もします。手間暇がかかりますよ」。
1~2万本が植えられているホップ畑。
日本のホップは海外のものに比べて枝が長く伸びるが、
病害虫の耐性などが弱い。小林さんは改良を続けている.
病気に強く香りの良い新たな品種へと改良
約3カ月間で高さ5mまで伸びるホップのツル。
「短期間で変化が見られるのが楽しい」と小林さん。
カスケー ドや信州早生(わせ)など
23種類のホップを育てている。
小林さんがホップ栽培に力を入れるのは、「山梨県産のホップの価値をもっと上げたい」という思いからだ。「北杜市は、首都圏や大阪にも出荷しやすく、新鮮なホップを届けることができます」。そのために、改良も手掛けているという。「海外のホップは乾燥状態で輸入するので、収穫したてのフレッシュホップは手に入らないのですが、改良により香りが強い品種が多くあります。日本産のホップは70年ほど変わらないので、新たな品種を生み出したいと考えています」。すでに7年前から小林さんは試験改良中だ。「フレッシュなホップは30分以内に使うことでよりビールの芳香が強くなるため、需要があります。今後は、病気に強く香りの良い品種に改良していきたいと考えています」。
カスケードホップを使ったクラフトビール
「北杜の華 ホップスペールエール」。
代表 小林 吉倫さん
1989年埼玉県出身。
農学部卒業後、肥料やプラント関係、工場の立ち上げなどの仕事を経て2018 年にホップ栽培を始める。
DATA
- 小林ホップ農園
- 【エリア】山梨・北杜市
- 【その他】http://hokutohops.com/
この記事を取材した人 ライター 小山芳恵 ライター生活四半世紀。八ヶ岳に出合ってその魅力にはまり、ライフワークの一環として八ヶ岳デイズに携わる。 カメラマン 篠原幸宏 1983年生まれ。20代後半の旅をきっかけに写真を始める。現在、長野県を拠点に活動中。