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手作りの古民家がもたらす
家と、家族が育つ暮らし<PANG HOUSE>

2025.9.5 八ヶ岳のモノ暮らす

八ヶ岳のふもとで紡ぐ家族と木の物語


視界いっぱいに広がるぶどう畑と、澄んだ空気に抱かれた八ヶ岳のふもと。東京から韮崎へと移住したパン・コーリーさんと理恵さんは、息子のカイルくん、飼い猫とともにここで新たな暮らしを育んでいる。移住のきっかけは知人の勧めと、コーリーさんが木工の仕事をする環境を求めたことだった。

作業音を気にせずに済む広々とした土地を探し、巡り合ったのが、築約150年の古民家。コーリーさんは、知人の宮大工と協力して自らの手で改装を進めた。「吹き抜けになっている2階の壁に漆喰を塗るところは、とても大変でしたよ」と当時を思い出しながらコーリーさんは微笑む。

障子や梁、柱など残せるものは生かしつつ、日照率の高い地域特性を考慮し、家のどこにいても自然光が差し込む設計に。居間とダイニングには仕切りを作らず、シームレスな空間を意識した。

コーリーさんの仕事場兼アトリエ『PANG HOUSE』は、自宅横に広々と設けた。ここでは家具の製作・販売、理恵さんが淹れるコーヒーの提供だけでなく、不定期でイベントも行われる。訪れた人と近隣の移住者、地元の住民が一緒になって、にぎやかなひとときを過ごすこともあるそうだ。

家族だけの時間、人々が交わる時間。そのどちらもが、家族にとってかけがえのないものとなっている。

木の個性を生かす手仕事が生むぬくもり


『PANG HOUSE』の家具作りには、コーリーさんの自然と向き合う姿勢が息づいている。東京でメガネデザインに携わった経験を持つコーリーさんだが、学生の頃から建築やプロダクトデザインを学び、家具作りの道を歩んだ。

家具には山梨の木を使用、ほか廃材業者から仕入れたり、自宅建築時の余り木を再利用したりしながら、新たな生命を吹き込んでいる。「古い木材は硬くて扱いにくいですが、削ってみて分かる新しい表情があります。その魅力を引き出すのが面白いですね」と話す。

現在はオーダーメイドの家具制作を基本に、家具の修理や調整などの仕事も請け負うコーリーさん。栗の木やヒノキ、マツ、アフリカンチークなど、素材の特性を生かしながら使い手の暮らしや用途に合わせ、一点一点、手仕事で仕上げている。小さな端材も無駄にせず、コースターや家具の一部として新たな役目を与えることも欠かさない。その人気は高く、予約はすでに夏まで埋まっているほどだ。

店のロゴには、コーリーさんの故郷・マレーシアのヤシの木が描かれ、家族の人数分・4つのヤシの実が実っている。「家族とともに育つ家具を作る」という想いを込めているだけあり、コーリーさんの家具に「長く使えて愛着が湧く」と話すファンも多い。今後は地元の木工作家とのコラボも検討中なのだとか。さまざまな人との出会いと暮らしの営みが、コーリーさんに次なる家具製作の意欲を与えている。

成長を見守る家具は家族の時間を刻む


カイルくんの誕生は、コーリーさんの家具作りに新たな視点をもたらしたという。以前は木材の直線的なデザインを採用した家具が多かったが、今では角を削ってカーブを作り出した優しく柔らかなフォルムが増えたそう。子どもの成長に寄り添う家具を作りたい。そんな思いが、デザインにも表れている。

たとえば、リサイクルショップで見つけた古い豆椅子。日本ではなじみ深い家具の一つかもしれないが、コーリーさんは初めて見たときにこのかわいらしいフォルムをもっと活用したいと考えた。座面を木に替え、年月とともに家のインテリアになじむよう仕立てることで、成長の記憶とともに家族の一部になっていくことを願い、心を込めて製作している。

「家の前が広いので、のびのびと遊ばせることができるのがいいですね。広い心を持った子どもに育ってほしいです」と理恵さんは膝に座る我が子を見つめる。地域の人々が見守りながら子育てをする、韮崎の環境の豊かさをパンさん夫妻は日々実感している。都会にはなかった「みんなで育てる」という感覚と、何よりも確かな人とのつながりがここにはある。

【NAME】パン・コーリーさん、 理恵さん、カイルくん 
コーリーさんはマレーシア出身。自身のブランドを立ち上げ、家具製作にいそしんでいる。理恵さんはドイツ生まれ、ニューヨーク育ちという経歴の持ち主。韮崎へ移住後、自宅横に店舗兼アトリエを設置した。

DATA


PANG HOUSE

【エリア】山梨・韮崎市
【住所】山梨県韮崎市穂坂町三ツ澤2149

【営業時間】11:00〜16:00

【定休日】不定休 ※Instagramにて告知

【他】 PANG HOUSE公式サイト(こちらをタップ)
PANG HOUSE公式Instagram(こちらをタップ)

この記事を取材した人

ライター 光田さやか
旅をしながら、人の生き方や価値観に触れることが好き。自然に寄り添う暮らしの中での、ヒト・コト・モノとの出会いを楽しんでいる。


カメラマン 荻野哲生
1986年生まれ。旅する写真家。「写真からストーリーが伝わるように心がけています」。



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