慣れない移住暮らしを楽しく豊かにしてくれた、ハーブとの出合い。 栽培し、活用し、暮らしに取り入れる。矢崎綾子さんはその魅力を伝え続ける。
畑仕事を手伝ううちにハーブ栽培を行うように
「ハーブの自然な香りって、体にスーッと入ってくるでしょう? 癒やされて元気になりますよね」 そうにこやかに話す矢崎綾子さん。 横浜でアロマセラピストとして働いていた矢崎さんが、八ヶ岳でハーブ栽培を行うきっかけとなったのは、本誌でも紹介している『ポニーハウスサラダガーデン』との出会いだ。
「新鮮なレタスとハーブ、食用花で作られたサラダブーケを見て、ブーケって食べられるの?と驚きました」と矢崎さん。 知らない土地に来たばかりで気持ちがふさいでいたが、草取りや畑仕事を手伝ううちに、土に触れることで気持ちが前向きに。「ハーブに関わる仕事をしているのに、最初、種や芽を見ても種類がわからないのがショックでしたね」。
オレガノやローズマリーなど、好きな香りの乾燥ハーブを好みの塩と混ぜてハーブソルトに 。肉 や魚料理をはじめ 、 煮 込み料理やサラダにも香りを添えてくれる。
収穫したハーブはしっかりと乾 燥させてから、料理などに利用する。
こうした作業も全て会員みんなで行う。
毎日が発見と感動の連続。 通い始めて3年目には、オーナーの佐藤保子さんのすすめもあり、ここで自らハーブ栽培を行うことに。 会員制の畑活動「畑からの贈り物」 を立ち上げた。「自分がここで元気になったから、ここで恩返しがしたいと思いました」。
息子の高海くんと一緒にハーブソルト作り。「これがスイートマジョラム、これがタイム、と教えながら、一緒に作るのも私にとっては大切な時間です」。
晴れ渡る青空の下
土に触れて元気をもらう
畑活動や講座を通してハーブの魅力を伝える
「畑からの贈り物」の会員は約30人。 30~80代まで、世代も多岐にわたる。「広い畑でハーブを育てるのは、1人ではできないこと。みんなが力を合わせてやることで、お互いに気持ちが楽になると思うし、種を撒いて植物を育てることで心が豊かになります。 世代を超えてお互いに助け合ったり、相談しあったり。ハーブだけではなく、心の交流の場になって嬉しい」と矢崎さんは言う。
これらの畑仕事だけではなく、 乾燥ハーブを使ってお茶にしたり、ハーブを使った料理講座を開いたりと、自分で育てたハーブを暮らしに取り入れる方法も伝えている。「会員の方はみんな食べることが大好きだから、特に料理の講座は喜ばれますよ(笑)。おいしく味わったり、優しい香りに癒されたり、加工してお手当てに使ったり。ハーブが持つこうした力をもっと広めていきたいと思っています」。
また矢崎さんはこうしたハーブ栽培と並行して、アカマツの間伐材を再利用する活動も行っている。移住してきた頃、矢崎さんは八ヶ岳の森でアカマツに出会った。「森の中にいい香りが漂っていて、何の香りだろう探してたらアカマツにたどりつきました」。
蓼科中央高原の八ヶ岳アカマツ¥1,600。
約5kgのアカマツから精油は10mlしかとれない。
清々しい針葉樹の香りを知ってもらいたいと、矢崎さんは木々か ら精油を作り、香りの活用や魅力を伝える「森の香り・里の香りコ ンシェルジュ」の資格を取得。アカマツを蒸留し、精油を抽出して製品化している。「体への効果も期待できるアカマツが、間伐材としてただ捨てられるのはもったいないです。お茶や精油にして、もっと日常に取り入れていきたいですね」。 精油やハーブを通しての福祉への貢献など、矢崎さんの思いは広がるばかりだ。
『畑からの贈り物』代表 矢崎綾子さん
IFA認定アロマセラピスト、 森の香り・里の香りコンシェルジュ。
国産精油の普及を目指して「Japan tsunagu project」の活動にも関わって いる。
DATA
- 畑からの贈り物
- 【エリア】長野・茅野市
- 【その他】ayakostyle53.com
この記事を取材した人 ライター 小山芳恵 ライター生活四半世紀。八ヶ岳に出合ってその魅力にはまり、ライフワークの一環として八ヶ岳デイズに携わる。 カメラマン 篠原幸宏 1983年生まれ。20代後半の旅をきっかけに写真を始める。現在、長野県を拠点に活動中。