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土でつながり、農でつながる 人と暮らし

2023.9.8 八ヶ岳のモノ

 自然豊かで広大な土壌に恵まれ、年間を通して日照時間が気の湧水地も多い。そんな八ヶ岳エリアは、環境や人に優しい野菜づくりの最適地として全国的に有名だ。そもそも、人と土は切り離せない関係にある。それは、いにしえからの仏教用語「身土不二」が示す通りであり、医食同源」「体は食べ物でできている」という考えにも通じる。さらに「身土不二」という言葉が表す「土に根の生えた暮らしをすること」=「自然の中で生かされていることに気づき、家族や友人、地域のコミュニティーを大切にして、そこに根付くこと」の意味は、八ヶ岳で土に触れ、野菜づくりを行い、自然と共に暮らす人々に出会うごとに実感する。 今号では、そんな身も心も土と近い暮らしができ、人間本来の生き方が体現できる場所、八ヶ岳ならではの”土につながり、農でつながる人と暮らしのあり方”を特集紹介する。

使い手と連携し、西洋野菜や伝統野菜を無農薬・有機で栽培

「消費者にも自分にも体に良い野菜を」と 手間暇をかけて土づくりから徹底し、 無農薬・有機栽培で珍しい野菜を作り続ける。

農業の実践を学び直し 無農薬野菜を栽培

 彼方に峻険な南アルプスや雄大 八ヶ岳を望む、広大な畑。「クレイジーファーム」を営む石毛康高さんは、ここで年間70種類を超える西洋野菜を作っている。

 石毛さんが農家になったのは、大学でバイオミメティックスの研究を行っていたことがきっかけだ。「農業大学で石油由来ではない、再生可能な資源を使ったものづくりを学んでいましたが、やっぱり農業がやりたいと思いました」と話し、大学卒業後に八ヶ岳 中央農業実践大学校へ入学。「大学では農業の実践的なことが学べていなかったので、ここで技術と知識を身に付けました」。


 その後、農業関連の会社に就職。当時としては珍しいイチゴの栽培 に取り組んでいたが「社員の仕事が農薬散布。自分の体調も悪くなり、農薬や化成肥料を使わない農作物を作りたいと思うようになりました」と石毛さんは言う。 就農と畑を借りられるタイミングが合致して、2006年、夢だった農業をスタートさせた。

有機野菜独特の 力強い味を大切に

 石毛さんが手掛けるのは、有機栽培で育てる西洋野菜が中心。カステルフランコ、ビーツ、サポイキャベツなど一般的なスーパーではあまり見かけることがないものもある。「最初は一般的な野菜を作っていましたが、知り合いが勤めていたレストランのシェフに西洋野菜を作ってみたら?と言われたのが転機でした。 シェフがイタリアで 買ってきてくれたズッキーニやナスの種を撒いて育てたら、うまく 栽培できたので、これならやれると思いました」。


 新しい種を手に入れると、試験 的に栽培し、実際に試食しておいしいかどうか確かめつつ試行錯誤しながら作る。 カラフルで味わいもさまざまな西洋野菜は飲食店で も評判を呼び、現在では約20店舗と取引している。コロナで一旦は取引が減少したものの、石毛さんが作る野菜への信頼は厚い。「実際に畑や野菜を見てもらい、私たち作り手の思いに共感してもらえ るシェフや店に使ってもらうよう にしています。北杜市のシェフは、 私たちを対等に見てくださるいい方ばかりです」。もちろん、石毛さんも取引のある店に食べに行くことを欠かさない。「どんな料理 にどのように使っていただいてい るのか、味わいながら野菜づくりの参考にもしています。シェフたちの豊富なアイデアには驚かされることも多いですね」。


 有機栽培で作る野菜は甘く、野菜本来の力強い滋味に溢れている。これもシェフたちに好まれる理由だと石毛さんは話す。「有機野菜は時に甘くなりすぎることが ありますが、自分はワイルドな味を大切にしたい。味が濃く、ほどよい苦味があり甘味がある。そのバランスを考えて土づくりをします。有機栽培はミネラルが豊富な土づくりが重要。 緑肥を施し、麦を撒いてその穂が出る前に刈って土にすき込む。麦が土の栄養になるので、様子を見ながら微細に調整します。自分たちなりにほぼ確立しましたが、これからもトライ&エラーの繰り返しですね」。

今後はこれらの野菜を使った加工品づくりにも取り組んでいきたいという石毛さん。かっこよくク レイジーな農業の未来は、これからも無限大に広がる。

#八ヶ岳#山梨#クレイジーファーム

DATA

  • クレイジーファーム
  • 【エリア】山梨・北杜市
  • 【その他】instagram.com/oyasaiokome/

この記事を取材した人

ライター 小山芳恵
ライター生活四半世紀。八ヶ岳に出合ってその魅力にはまり、ライフワークの一環として八ヶ岳デイズに携わる。


カメラマン 篠原幸宏
1983年生まれ。20代後半の旅をきっかけに写真を始める。現在、長野県を拠点に活動中。

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